ちょうふく山の山んばは我が家の愛読書

今週のお題「本棚の中身」

 

 あわてて本棚を見に行った。大工だった父に造って貰った8畳の部屋の端から端に2段の本棚が作り付けになっていて様々な本がぎっしりと詰まっている。

 日本昔話、歴史街道、バレーボール教本、金融関係の参考書、日本の伝説全集、釣りやゴルフ教本、医学関係の本、たとえばめまい耳鳴りをなおすには等、そして推理小説などの文庫本がずらりと並んでいる。

 

 日本昔話の中で「ちょうふく山の山んば」という本は我が家の愛読書だ。子供達にせがまれて何回読み聞かせただろうか。

 内容はこうだ。ある綺麗に晴れた十五夜の晩に村人達がお月見をしていると、突然雲がわき雨が降り出し、雷がゴロゴロ鳴り出し、雲の中から不気味な声が聞こえてくる。「ちょうふく山の山んばが子供産んだで、餅もってこおーツ、もってこねば、人も馬も食い殺すどーツ。」と、村人達は殺されては大変と皆で米を出し合って餅をつく。

 元気者のかも安と権六、道案内の杉山のばんばが選ばれて、山んばのところまで餅を運んで行く。けれども突然風がビューッと吹いてきて「餅はまだかあ」という山んばの声に驚いたかも安と権六は担いでいた餅を投げ捨てて、逃げ帰ってしまう。一人残されたばんばは、よいせよいせと山道を登り山んばの家にたどり着く。「ご、ごめんくだされ」出てきた山んばは恐ろしくでかい顔をしていたがやさしい山んばだった。

 山んばは、置いてきた餅を、昨日産んだマルに取りにいかせ、その後、杉山のばんばは山んばの家で、マルの子守、掃除、洗濯、ご飯の支度などせっせと働くようになる。そして産後の肥立ちの21日が過ぎてやっとこ村に帰ることができた。山んばに錦の織物を土産に貰って帰ると、村人達はばんばのお葬式をやっているところだったのでびっくり仰天。ばんばは、皆に山んばのことを話して聞かせ、錦の織物を分けてやると、次の日には織物は、また元通りになっているという不思議なものだった。それからというもの、村人達はみんな元気でしあわせにくらしましたとさ。と、そんなお話。

 山んばというと、怖い印象ではあるが、ちょうふく山の山んばは、とにかくかわいい。山んばが餅を食べているところを、本の挿絵をまねて描いたけどちょっと気持ち悪いかも。

 

 しかし、その本棚から本を取り出したのは、数年前にそれを出して孫に読み聞かせた時だけだ。その他の本は全然読んでない。これを機会に整理する必要がある。

 

 本を買うと、本が増え本棚がいっぱいになる。1度読んだ本はまず、もう読まない。今は私立図書館で借りて読んだりしている。1度に8冊くらい借りると返すのに期限が過ぎてしまい、返却して下さいと電話を貰ったこともある。それが面倒になり又本屋で本を買ったりする。

 以前私立図書館で借りた本で、「幕末下級武士の絵日記」という本があったが、当時の下級武士の生活がわかりやすくて、とてもいい本だった。その武士が藩主に意見を申し上げたら怒りを買い、外出禁止を申しつけられる。けれども、友達も沢山いて自分の家でも他人の家でも飲み会がやけに多い。金がなければ質入れしてでも酒と肴を買い皆をもてなす。そして、いつもお寺に入り浸っている。当時のお寺は皆の拠り所だったようだ。筆1本で書かれた絵が当時の様子を連想させる。血なまぐさい印象の幕末もあんなのんびり暮らしていた人達もいたんだ。金は無い、あるのは暇ばかり。

 今のせちがらい面倒くさい世の中に比べたら、何か幸せそうだ。

 

本を読むと他の人の人生も体験できる。

我が家の本棚もこれを機に整理して生きた本棚にしようと思う。