私の夏は化け猫騒動で始まった。

今週のお題「夏物出し」

 

 夏と言えばお化けの映画だ。家から歩いて30分くらいの所に映画館があった。小さい頃祖母と見た化け猫騒動の映画は強烈に覚えている。ネットで調べると「怪談佐賀屋敷」1953年公開、主演入江たか子とある。私が3歳の時だ。化け猫が出る度に怖くて怖くて祖母の胸元に手を入れて(当時の祖母の服装は着物に、頭は長い髪を後ろで縛って団子状に丸めた、おばあさんスタイルの定番だ。)垂れた乳をつかんだり、引っ張ったり、あるいは乳が出ないのにしゃぶったりしていたのを覚えている。しかし人生1発目に見た映画が化け猫騒動だなんて何てことだ。幼子にそんな映画を見せる祖母の感性はいったいどうなっているんだ。

 浅丘ルリ子小林旭絶唱も見た記憶がある。その後、その映画館はストリップ劇場になった。

 

 夏の風物詩といえば蚊帳がある。蚊帳をつって家族皆で川の字で寝た。何とも落ち着く空間ではあった。宮崎駿の映画、となりのトトロの中で、サツキとメイが蚊帳の中で寝ているシーンがあるが、廊下の雨戸が開いたままだ。ゆったりした良き時代だったのだろうか。今では戸を開けたままで寝るなんて物騒で考えられない。

 渦巻きの蚊取り線香の匂い、簾をかけた窓で風鈴がチンチロリンと鳴る。うちわ、何々酒店とか宣伝用によく貰った。大工の父が黒いはっぴを着て首には日本手拭いをかけて、うちわで扇いでいた姿を思い出す。

 かき氷、氷水と言っていたがよく食べた。ただの粉砕した氷の上にイチゴ、レモン、メロン、ミルクと称して多少の匂いがついているが、赤、黄色、緑、白のシロップをかけたシンプルなものだ。だんだんこめかみのあたりが痛くなってくる。でも旨かった。

 

 花火もやった。線香花火は好きだった。バチャバチャ、バチャバチャと音がして最後は小さな玉になり、ぽとっと落ちる。

 

 夏と言えば朝顔だ。加賀千代女の俳句で朝顔に釣瓶とられてもらいみず」という句がある。朝顔が井戸の釣瓶に巻き付いてしまったが、取るのもかわいそうなので、お隣に水を貰いに行こうという句だ。夏の朝の情景が伝わってくる。

 

 さて、私はこれから、何回夏を迎えられるだろうか。ただただ暑いと、うなっているだけでなく、夏の情緒を感じる演出をして夏を楽しまねばと思う。